「奨学金の返済が苦しい。どうしたら良いのだろう……」
そんな悩みのある方はいらっしゃいますか。
もしも今、奨学金の返済が少し苦しいと思っているのであれば、これ以上返済が負担になる前に、奨学金やそれ以外の借金の返済額を減額できないか確認してみましょう。
今回の記事では、
- 奨学金を滞納した場合の不利益
- 奨学金の返済が苦しい時の救済措置
- 自己破産と奨学金の返済義務
などについてご説明します。
奨学金の返済を滞納したらどうなる?
奨学金を貸与する機関はいくつかありますが、ここでは、代表的な奨学金である『独立行政法人日本学生支援機構』から奨学金の貸与を受けている場合についてご説明します。
奨学金の返済を滞納すると、次のような不利益があります。
「事故情報」とは?
「事故情報」とは、俗に『ブラックリスト』と呼ばれるもので、延滞や破産情報など金融機関が与信審査をするときにマイナスとなる情報のことをいいます。
現在、日本には次の3つの信用情報機関があり、日本学生支援機構は『KSC』に加盟しています。
奨学金の返済を滞納すると、次のケースに該当する場合には日本学生支援機構により、KSCに事故情報が登録されます。
(※2009年以前に貸付けを受けた方で「個人信用情報の取扱いに関する同意書」を提出していない場合には登録されません)
参考:個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録|独立行政法人 日本学生支援機構
奨学金の滞納が上記の期間に達した場合には、日本学生支援機構がKSCにそのことを登録しますので、登録されている間は、基本的には新たな借入れやクレジットカードを作ることが困難になります。
奨学金の返済が苦しい時はどうしたら良い?
日本学生支援機構の奨学金については、返済が苦しい方に対して次のような救済措置があります。
参考:返還が難しくなった場合|独立行政法人 日本学生支援機構
ただし、これらについては、審査が認められても一時的に返済が猶予又は減額されるだけで、返済総額が減額されるわけではありません。
一時的に返済を猶予などされても、他の借金の返済が苦しいという場合には、別の方法を考えなくてはいけません。
更に、かなり限定的なケースですが、次のケースでは奨学金の返済が免除される可能性があります。
奨学金の返済が免除された場合には、連帯保証人や保証人の返済義務もなくなりますので、該当する場合には、まずは日本学生支援機構に相談してみることをお勧めします。
参考:特に優れた業績による返還免除の手続き|独立行政法人 日本学生支援機構 参考:死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除|独立行政法人 日本学生支援機構
自己破産をしたら奨学金の返済義務はどうなる?
それでは、自己破産をしたら奨学金の返済義務はどうなるのでしょうか。
自己破産は、免責が認められれば、非免責債権以外の全ての借金などの返済義務がなくなるという大きなメリットがあります。
他方、自己破産には次のようなデメリットもあります。
奨学金の返済が苦しくて自己破産を検討されている方は、事前に自己破産のメリット・デメリットをしっかりと検討してください。
(1)「事故情報」が登録される
先ほどご説明した「事故情報」ですが、自己破産をした場合にも、自己破産をしたことが信用情報機関に登録されます。
自己破産をしたことについての登録期間は、次のとおりです。
KSC | 破産手続き開始決定の有無 | 破産手続き開始決定の日から7年を超えない期間 |
自己破産をして免責を受けたのが奨学金だけという場合にはKSCに、それ以外の借金などについても免責を受けた場合には、各債権者の加盟する信用情報機関にそれぞれ自己破産をしたという情報が登録されます。
登録期間は5~7年ですので、先ほどご説明した「奨学金の返済の滞納」についての情報と比較すると登録期間は長くなります(*登録期間が満了すれば、信用情報機関の事故情報については抹消されます)。
(2)一定の価値のある財産は処分される
自己破産を申立てると、債務者の財産は、次の2種類に分けられます。
「破産財団」を構成する財産は、基本的には換価されて債権者への配当に充てられますので、破産手続を申立てると手放さなくてはいけません。
他方、「自由財産」については破産手続においても手放す必要はありません。
「自由財産」の範囲は比較的広いので(例えば99万円以下の現金や、生活に必要な家具・家電などは「自由財産」に含まれます)もともと一定の価値のある財産を持っていなければ「自己破産をしても失う財産は特になかった」という方も少なくありません。
ですから、そのような方についてはこの項目のデメリットはないでしょう。
(3)一定期間、就けない職業がある
破産手続開始決定が出ると、一定の職種に就くことが制限されます。
一定の職種に就くことが制限されることを資格制限といい、制限の対象となる職種を「制限職種」といいます。
制限職種に就いている方で、一時的であっても仕事ができなくなるのは困るという方は自己破産以外の途を探る必要があります。
(4)連帯保証人や保証人が請求を受ける
日本学生支援機構から奨学金を借りる時は、保証人を付けることを求められ、機関保証を選ばなかった方は、両親や親族などの近親者が連帯保証人や保証人となっていることが多いでしょう。
奨学金を借りた本人が自己破産をしても、連帯保証人や保証人の返済義務は免除されませんので、本人が自己破産をした場合には、連帯保証人や保証人に対して奨学金の残額の返済が請求されます。
連帯保証人や保証人が支払わない場合はどうなる?
連帯保証人や保証人が奨学金の返済を請求されてこれに応じない場合、連帯保証人や保証人に対して、日本学生支援機構から法的措置をとられる可能性があります。
奨学金は、総額で数百万円になることも多く、結局、連帯保証人や保証人も返済ができずに自己破産をするケースも少なくありません。
保証人に迷惑をかけないにはどうしたら良い?
返済義務を負っているのが奨学金だけ、という場合には、減額返還制度や返還猶予制度が利用できないか確認してみましょう。
日本学生支援機構や債権回収会社からの督促を無視していると、最終的には本人ばかりでなく連帯保証人や保証人の財産も差し押さえられてしまいます。
日本学生支援機構から奨学金の貸与を受けている場合には、奨学金相談センターまでご相談ください。
その他の奨学金の貸与を受けている場合には、各機関に相談し、督促は無視しないようにしてください。
他の借金などの返済が苦しい場合
奨学金の返済ができないという方の中には、他に借金などがあり、その返済に苦しんでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方は、それ以上返済が困難になる前に、『任意整理』を検討することをお勧めします。
「任意整理」とは、今後発生する利息(将来利息)をカットしてもらい、残った元本だけを分割で払っていくことを、借入先と交渉する手続です。
日本学生機構は貸与した奨学金そのものや利息のカットには応じませんが、奨学金以外の借金について任意整理をして、家計収支を見直すことで、奨学金の返済余地ができることも多いです。
奨学金や借金の返済に困っている方は、他の借金について『債務整理』をできないか、まずは弁護士などに相談することをお勧めします。
【まとめ】自己破産をして免責が認められると、奨学金の返済義務はなくなる
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 奨学金の返済を滞納すると、次のような不利益がある
- 延滞金がつく
- 督促を受ける
- 信用情報機関に事故情報が登録される
- 日本学生支援機構では、返済が困難な場合に減額返還制度と返還期限猶予制度がある。
- 自己破産をして免責が認められると、奨学金の返済義務はなくなる。
- 自己破産をすると、次のデメリットがある。
- 信用情報機関に自己破産をしたという事故情報が登録される
- 一定の価値のある財産は処分される
- 一定期間就けない職業がある
- (連帯)保証人が請求を受ける
- 奨学金を借りた本人が奨学金を返済しないと、連帯保証人や保証人の財産が差し押さえられるおそれがある
- 奨学金のほかに借金がありその返済に苦しいという方は、弁護士などに、他の借金について任意整理ができないか相談してみることをお勧めする
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困りごとが起きた時,ひとりで考え込むだけでは,どうしても気持ちが暗い方向に向かいがちで,よい解決策も思い浮かばないものです。そのようなときは,ひとりで抱え込まないで,まず専門家に相談することが,解決への近道ではないでしょうか。どのようなことでも結構ですので,思い悩まずにご相談ください。依頼者の方々が相談後に肩の荷を降ろして,すっきりとした気持ちで事務所を後にできるよう,誠心誠意力を尽くします。